「辞める前に生活費3か月分」。よく言われます。わたしも聞いたことがあります。
ただ、なぜ3か月なのかを説明している記事を、あまり見かけません。感覚で言っているのか、根拠があるのか。
調べたら、制度から逆算するとちゃんと理由がありました。ついでに、3か月では足りない人がいることも分かりました。
まず、失業手当は「すぐには」振り込まれません
ここが一番の理由です。辞めた翌月から入ってくる、ということはありません。
会社が手続きをして、離職票が手元に届きます。ここは会社次第です。すぐ来ないこともあります。
求職の申込みをして、離職票を出します。この日が起点になります。
手続きの日から通算7日間は、誰でも受け取れません。会社都合でも自己都合でも同じです。
2025年4月1日以降に辞めた場合は原則1か月。それ以前は原則2か月でした。倒産や解雇ならこの期間はありません。
認定は4週間ごとです。認定を受けて、はじめてその期間分が確定します。
認定日からおよそ1週間後に振り込まれます。
積み上げると、手続きの日から初回の振込まで、自己都合でおよそ2か月、会社都合でおよそ1か月です。
そこに離職票が届くまでの時間が乗ります。退職日から数えると、自己都合でだいたい2か月半くらいを見ておくことになります。
認定日はハローワークが指定します。ここは自分で早められません。
いくらもらえるのか
計算の順番はこうです。
- 賃金日額 = 離職前6か月に毎月きまって支払われた賃金の合計 ÷ 180(賞与は入りません)
- 基本手当日額 = 賃金日額のおよそ50〜80%(60〜64歳は45〜80%)
- 1か月あたり = 基本手当日額 × 認定された日数(4週間なら28日)
率に幅があるのは、賃金の低い方ほど高い率になる仕組みだからです。自分がどの率になるかは、ハローワークで確認してください。
年齢ごとに上限があります
どれだけ給料が高くても、基本手当日額には天井があります。
| 年齢 | 基本手当日額の上限 |
|---|---|
| 30歳未満 | 7,450円 |
| 30歳以上45歳未満 | 8,270円 |
| 45歳以上60歳未満 | 9,110円 |
| 60歳以上65歳未満 | 7,830円 |
(令和8年8月1日現在の額です。毎年8月に改定されます)
45歳以上60歳未満で上限いっぱいでも、28日で25万5,080円です。手取りが元の給料を超えることはありません。
同時に、出ていくお金が増えます
ここを見落とすと計算が狂います。会社が半分持ってくれていたものが、全額自己負担になります。
| 項目 | 退職後 | 金額の目安 |
|---|---|---|
| 国民年金 | 自分で払う | 月17,920円(令和8年度・定額) |
| 健康保険 | 任意継続か国民健康保険 | 前年の所得で変わる。任意継続は在職中のおおむね2倍 |
| 住民税 | 普通徴収に切り替わる | 前年の所得にかかる。収入ゼロでも来る |
国民年金だけは誰でも同じ金額なので、先に計算に入れられます。夫婦2人なら月35,840円です。
では、いくら貯めればいいのか
式にすると、こうなります。
- 必要額 = (いまの生活費 + 増える固定費)× 空白の月数 + 予備
- 空白の月数 = 自己都合なら2.5か月、会社都合なら1.5か月が最低ライン
- そのあと手当が出ても、元の給料の5〜8割にしかなりません
「3か月分」という目安は、自己都合で辞めて、手当が出るまでの2.5か月を乗り切る額としては合っています。
ただ、次が決まっていないなら3か月では足りません。手当は出ますが減ります。減った分を埋める貯金が別に要ります。
3か月では足りない人
- 去年の所得が高かった人。住民税と国保が重くのしかかります
- 扶養している家族がいる人。国民年金は1人あたり月17,920円です
- 上限に当たる給料をもらっていた人。減り幅が大きくなります
- 次の仕事のあてがない人。所定給付日数を使い切る前提で考えることになります
副業をやっている人は、この計算が変わります
副業に収入があるなら、空白の期間は短くなります。ゼロにはなりませんが、埋まります。
ただし順番を間違えないでください。
わたしは会社員をしながら副業をしています。辞める予定はいまのところありません。ただ、辞めても困らない状態を作っておくことと、実際に辞めることは別だと思っています。
住民税の扱いは副業が会社にバレる原因は住民税ですに書きました。
よくある質問
- 辞めてすぐに失業手当は出ますか?
-
出ません。手続きの日から7日間の待期があり、自分から辞めた場合はさらに給付制限が1か月あります。初回の振込まで自己都合でおよそ2か月、会社都合でおよそ1か月です。
- いくらもらえるか、自分で計算できますか?
-
おおよそはできます。離職前6か月の賃金(賞与を除く)の合計を180で割ると賃金日額。その50〜80%が基本手当日額です。ただし率は賃金額によって変わるので、正確な額はハローワークで確認してください。
- 給料が高ければ、そのぶん多くもらえますか?
-
上限があります。45歳以上60歳未満で1日9,110円が天井です(令和8年8月1日現在)。
- 国民年金は必ず払わないといけませんか?
-
原則として払います。ただし収入が減った場合には免除や納付猶予の制度があります。黙って払わないのと、申請して免除されるのは別の扱いになります。年金事務所か市区町村に相談してください。
- 貯金がいくらあれば辞めていいですか?
-
生活費と固定費の増加分を足して、自己都合なら最低2.5か月分です。次が決まっていないなら、手当が出ても収入は減るので、それ以上あったほうが安全です。
- 副業の収入があると失業手当は減りますか?
-
働いた日や収入は申告が必要で、内容によって減額や不支給になります。自己判断せず、ハローワークに事前に相談してください。
まとめ
- 失業手当は自己都合で約2か月、会社都合で約1か月あとに初回振込
- 退職日から数えると、離職票を待つぶんさらに延びる
- もらえるのは賃金日額の50〜80%。年齢別の上限あり
- 国民年金は月17,920円(令和8年度)。誰でも同じ額
- 健康保険と住民税は前年の所得で決まる。収入ゼロでも来る
- 「3か月分」は自己都合の空白を埋める最低ライン。次が決まっていないならもっと要る
辞めるかどうかは自分で決めることです。ただ、数字を知らずに決めるのと、知って決めるのは違います。
この記事で確認した出典
- ハローワークインターネットサービス「基本手当について」(基本手当日額の算定方法・上限額は令和8年8月1日現在)2026年8月26日確認
- ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」2026年8月26日確認
- 岩手労働局・群馬労働局「令和7年4月1日以降に離職された方は『給付制限期間』が1か月に短縮されます」2026年8月26日確認
- 大阪労働局・神奈川労働局 雇用保険受給に関する案内(待期・認定日・振込時期)2026年8月26日確認
- 日本年金機構「国民年金保険料」(令和8年度 月額17,920円)2026年8月26日確認

コメント