「開業届は事業開始から1か月以内」。副業の記事でよく見ます。わたしもそう覚えていました。
今回、国税庁のページを2つ読んで確認しました。いまの案内は違いました。
[提出時期]事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までに提出してください。
国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」2026年8月26日確認
同じことがタックスアンサーNo.2090にも書かれています。1か月ではありません。その年の確定申告期限までです。
ただし、これで安心してはいけません。本当の締切は別のところにあります。
本当の締切は、青色申告承認申請書のほうです
開業届そのものには、出さなくても罰則がありません。意味が出るのは青色申告とセットにしたときです。
そして青色申告承認申請書には、きっちりした期限があります。
| 状況 | 提出期限 |
|---|---|
| すでに事業を行っている | 青色申告をしようとする年の3月15日まで |
| 1月16日以後に新たに事業を開始した | 事業開始等の日から2か月以内 |
つまり、いま副業をやっていて来年から青色申告にしたいなら、来年の3月15日が締切です。確定申告のときに一緒に出せばいい、とはいきません。
ここを1日過ぎると、その年は白色申告です。1年待つことになります。
その前に。自分は青色申告できるのか
青色申告ができるのは、不動産所得・事業所得・山林所得がある人です。
副業の収入が雑所得だと、青色申告はできません。ここが最初の関門です。
事業所得と雑所得の分かれ目
国税庁の通達に、判定の基準が書いてあります。原文を引きます。
事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する。なお、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合(その所得に係る収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除く。)には、業務に係る雑所得に該当することに留意する。
所得税基本通達35-2(注)2026年8月26日確認
読み解くと、条件は2つです。
- 社会通念上、事業と称する程度で行っているか。継続性、規模、営利性などで判断されます
- 取引を記録した帳簿書類を保存しているか。保存がなければ、原則として雑所得になります
| 帳簿書類の保存 | 収入金額 | 扱い |
|---|---|---|
| ある | 金額を問わず | 社会通念上の判定へ。事業と認められれば事業所得 |
| ない | 300万円以下 | 業務に係る雑所得 |
| ない | 300万円超 | 事業所得と認められる事実があれば事業所得になりうる |
帳簿があれば自動的に事業所得になる、ではありません。帳簿は入口で、そのうえで社会通念上の判定を受けます。
青色申告特別控除は3種類あります
同じ「青色申告」でも、控除額が3段階に分かれます。
| 控除額 | 条件 |
|---|---|
| 65万円 | 正規の簿記(複式簿記)で記帳し、貸借対照表と損益計算書を添付。さらにe-Taxによる電子申告または電子帳簿保存 |
| 55万円 | 正規の簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を添付。期限内に申告(電子は使わない) |
| 10万円 | 簡易な記帳(現金出納帳など) |
65万円と55万円の差はe-Taxを使うかどうかだけです。10万円の差がここで出ます。
会計ソフトを使えば複式簿記は自動で作られます。手で仕訳を書く必要はありません。
わたしの場合
法人の代表を7年やっています。確定申告は8年。法人の登記も自分でやりました。
そのうえで正直に書くと、最初の1年はぐちゃぐちゃでした。レシートを箱に放り込んで、2月になってから並べ始めるやつです。
何が一番きつかったかというと、1年前の入金が何の入金だったか思い出せないことでした。金額は通帳に残っていても、内訳が分からない。
帳簿は半年後の自分のためにつけるものだと思っています。税務署のためではありません。
副業を始めたばかりの人がやること
開業届より先です。日付・相手・金額・内容の4つを残しておけば、あとで形にできます。会計ソフトでも表計算でも構いません。
継続してやるつもりか、規模はどうか。迷うなら税務署か税理士に聞いてください。ここで雑所得なら、青色申告の話は先になります。
開業届は年内の確定申告期限まで。青色申告承認申請書は3月15日か、開業から2か月以内。期限が短いほうに合わせます。
よくある質問
- 開業届を出さないと罰則がありますか?
-
開業届自体に罰則の定めはありません。ただし青色申告をするには、開業届とは別に青色申告承認申請書を期限内に出す必要があります。
- 開業届は事業開始から1か月以内ではないのですか?
-
国税庁の現在の案内では「事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限まで」となっています。手続き案内のページとタックスアンサーNo.2090の両方で同じ記載でした。心配なら早めに出して困ることはありません。
- 副業の収入は事業所得と雑所得のどちらですか?
-
帳簿書類の保存がなければ、原則として業務に係る雑所得です。保存があれば、社会通念上事業と称する程度かどうかで判定されます。金額だけで自動的に決まるものではありません。
- 会社員でも青色申告できますか?
-
副業の所得が事業所得と認められれば可能です。給与所得だけの人はできません。
- 65万円控除を取るには何が要りますか?
-
複式簿記での記帳、貸借対照表と損益計算書の添付、そしてe-Taxによる電子申告または電子帳簿保存です。このどれかが欠けると55万円になります。
- 会社に副業が知られませんか?
-
開業届を出したこと自体が会社に通知されることはありません。知られる経路は住民税です。別記事に書いています。
まとめ
- 開業届の提出時期は「その年分の確定申告期限まで」。1か月以内ではない
- 本当の締切は青色申告承認申請書。3月15日か、開業から2か月以内
- 青色申告ができるのは不動産所得・事業所得・山林所得がある人
- 帳簿書類の保存がなければ、原則として雑所得
- 帳簿があっても自動で事業所得にはならない。社会通念上の判定を受ける
- 青色申告特別控除は65万・55万・10万の3種類。65万と55万の差はe-Taxだけ
制度の話は、調べれば書いてあります。人の記事を鵜呑みにすると、今回の『1か月以内』のように古い数字を覚えてしまいます。
この記事で確認した出典
- 国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」2026年8月26日確認
- 国税庁 タックスアンサー No.2090「新たに事業を始めたときの届出など」2026年8月26日確認
- 国税庁 タックスアンサー No.2070「青色申告制度」(令和7年4月1日現在法令等)2026年8月26日確認
- 国税庁「所得税基本通達 法第35条《雑所得》関係 35-2」2026年8月26日確認

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