退職した人の話を読むと、「失業手当がいくらもらえるか」はよく出てきます。でも、辞めたあとに来る請求書の話は、あまり出てきません。
順番としては、こっちが先に来ます。健康保険と年金は辞めた月から、住民税は去年の所得に対して請求が来ます。収入は止まっているのに、です。
もらえるお金と払うお金、両方を並べて書きます。
もらえるお金
基本手当(いわゆる失業手当)
雇用保険に入っていた人が、次の仕事を探しているあいだにもらえるお金です。失業保険、失業給付金とも呼ばれますが、正式には基本手当といいます。
もらえる日数は、年齢と雇用保険に入っていた期間と辞め方の3つで決まります。倒産や解雇で辞めた人のほうが、自分から辞めた人より長くなります。
日数は辞め方で2つの表に分かれます。倒産や解雇で辞めた人と、自分から辞めた人です。
自分から辞めた場合(定年・期間満了もこちら)
| 雇用保険に入っていた期間 | もらえる日数 |
|---|---|
| 1年未満 | 90日(※) |
| 1年以上10年未満 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
※ 特定理由離職者については、被保険者期間が6か月(離職以前1年間)以上あれば受給資格を得られます。
年齢は関係ありません。20代でも50代でも、加入期間が同じなら同じ日数です。
倒産・解雇などで辞めた場合(特定受給資格者など)
こちらは年齢でも変わります。最大330日まで伸びます。
| 年齢 | 1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ― |
| 30歳以上35歳未満 | 90日 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 |
| 35歳以上45歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 240日 | 270日 |
| 45歳以上60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
| 60歳以上65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
たとえば45歳で20年勤めた人なら、自己都合なら150日、会社都合なら330日です。倍以上ちがいます。
障害があるなど就職が困難と認められる方は、さらに別の表になります。1年未満で150日、1年以上なら45歳未満300日・45歳以上65歳未満360日です。
会社都合か自己都合かで、ここまで変わります。離職票の理由欄は必ず確認してください。
【2025年4月の変更】自分から辞めた場合の待ち時間が短くなりました
自分から辞めた場合、手続きをしてもすぐには振り込まれません。7日間の待期期間があり、そのあとに給付制限期間があります。
この給付制限期間が、令和7年(2025年)4月1日以降に辞めた人は原則1か月になりました。3月31日以前に辞めた人は原則2か月です。
| 辞めた日 | 給付制限期間 |
|---|---|
| 2025年3月31日まで | 原則2か月 |
| 2025年4月1日から | 原則1か月 |
| 5年間に2回以上、自分から辞めている場合 | 3か月 |
| 重大な理由で解雇された場合(重責解雇) | 3か月 |
1か月分の生活費が変わります。2024年までの情報で書かれた記事がまだ大量に残っているので、日付を確認して読んでください。
教育訓練を受けると、給付制限が解除されます
ここは自分の経験と重なるので、少し詳しく書きます。
令和7年4月以降、離職期間中、または離職日前1年以内に教育訓練を受けた場合は、給付制限が解除されて基本手当を受け取れます。厚生労働省がそう案内しています。
わたしは2026年1月から7月まで、オンラインのデザインスクールに通いました。定価80万円のところ、経済産業省のリスキリングの制度を使って実質40万円です。修了しないと補助が出ない仕組みでした。
そのときは在職中だったので給付制限の話は関係ありませんでしたが、辞めるつもりがあるなら、辞める前に訓練を始めておく手があるということです。対象になる訓練かどうかはハローワークで確認してください。
早く決まったら、残りの一部が「再就職手当」で出ます
もらい終わる前に次の仕事が決まると、残っている日数の6割か7割が一時金で出ます。もらい切ってから就職するより得になる仕組みです。
| 就職した時点で残っていた日数 | もらえる割合 |
|---|---|
| 所定給付日数の3分の2以上 | 70% |
| 所定給付日数の3分の1以上3分の2未満 | 60% |
計算式は支給残日数 × 60%または70% × 基本手当日額です。基本手当日額には上限があります。
条件は8つあります。大阪労働局の案内から引きます。
- 所定給付日数の3分の1以上を残して就職したこと
- 待期(7日間)が終わっていること
- 3か月の給付制限がある方は、待期満了後1か月間はハローワークまたは職業紹介事業者等の紹介で雇用されたこと
- 原則として、雇用保険の被保険者となっていること
- 1年を超えて勤務することが確実であること
- 離職前の事業主に雇用されたものでないこと(密接な関係にある事業主を含む)
- 最初にハローワークへ来た日より前に雇用が内定していた事業主に雇用されたものでないこと
- 再就職の日の前3年以内に再就職手当・常用就職支度手当を受けたことがないこと
見落としやすいのが4番目です。フリーランスとして独立した場合は「雇用保険の被保険者」になりません。独立を考えている人は、再就職手当をあてにしないほうがいいです。
そのほかの給付
基本手当以外にも、条件を満たせば受け取れるものがあります。名前だけ挙げておきます。
- 再就職手当 — 早く次の仕事が決まった場合
- 教育訓練給付 — 指定された講座を受けた場合。一般・特定一般・専門実践の3種類
- 傷病手当 — 求職の申込み後に病気やけがで働けなくなった場合
- 求職者支援制度 — 雇用保険に入っていなかった人向け
どれも条件が細かいので、ハローワークで自分が当てはまるかを聞くのが早いです。
払うお金。ここを書いている記事が少ない
会社を辞めると、今まで給料から引かれていたものを自分で払うことになります。しかも会社が半分持ってくれていた分がなくなります。
① 健康保険 — 任意継続か、国民健康保険か
選択肢は主に2つです。家族の扶養に入れるならそれがいちばん安いですが、収入の条件があります。
| 任意継続 | 国民健康保険 | |
|---|---|---|
| 手続きの期限 | 資格喪失日の翌日から20日以内 | 退職後14日以内が目安(自治体による) |
| どこで | 協会けんぽの都道府県支部など | 市区町村の窓口 |
| 入れる期間 | 最長2年 | 制限なし |
| 保険料 | 全額自己負担。在職中のおおむね2倍(上限あり) | 前年の所得で計算 |
任意継続の20日以内は短いです。辞めてから調べ始めると間に合いません。どちらが安いかは前年の所得と扶養の人数で変わるので、辞める前に両方の金額を出してもらってください。市区町村の窓口で国保の試算をしてくれます。
② 国民年金 — 14日以内
厚生年金から外れるので、第1号被保険者への切り替えが要ります。退職日の翌日から14日以内に、市区町村の国民年金の窓口か年金事務所で手続きします。
払うのが厳しい場合は免除や納付猶予の制度があります。黙って払わないのと、申請して免除されるのは、まったく別物です。将来の受給額の扱いが変わります。
③ 住民税 — 去年の分が、今年来る
ここがいちばん効きます。住民税は前年の所得に対してかかります。つまり、収入がゼロになった年に、働いていた年の分の請求が来ます。
辞めた月によって扱いが変わります。
| 辞めた時期 | 残っている住民税の扱い |
|---|---|
| 1月1日〜4月30日 | 5月31日までに支給される給与や退職金から、申し出がなくても一括徴収される |
| 6月1日〜12月31日 | 普通徴収に切り替わり、自分で納付書で払う。申し出れば一括徴収も選べる |
6月以降に辞めた場合、数か月後にまとまった納付書が届きます。ここを見込んでいないと、貯金が思ったより早く減ります。
わたしは法人をやっているので、この請求が来る時期の感覚があります。無収入の6月に届く納付書は、けっこう心に来ます。
いつ、何をするか
国民健康保険の保険料を市区町村で試算してもらう。任意継続の金額も会社か協会けんぽで聞く。教育訓練を受けるつもりなら、対象講座かをハローワークで確認する。
国民年金の切り替えが14日以内。任意継続を選ぶなら20日以内。この2つは期限が短いので先にやります。離職票が届いたらハローワークへ。
住民税の納付書が来ます。金額を見て驚かないように、辞める前に「去年の所得に対していくらか」を調べておいてください。市区町村で聞けます。
副業をやっていた人が、少しだけ有利になる点
副業で事業所得や雑所得があった人は、辞めたあとの手続きにすでに慣れています。確定申告を一度やっていれば、経費の考え方も分かっています。
ただし、大事な注意があります。
住民税の話はこちらの記事に、20万円の判定の話はこちらの記事に書いています。
よくある質問
- 自分から辞めても失業手当はもらえますか?
-
もらえます。ただし7日間の待期期間のあとに給付制限期間があります。2025年4月1日以降に辞めた場合は原則1か月です。
- 会社都合と自己都合では、そんなに違いますか?
-
違います。給付制限がない点と、もらえる日数が長くなる点の2つです。日数は年齢と加入期間で細かく分かれているので、ハローワークの表で確認してください。
- 早く就職が決まったら、残りの失業手当はどうなりますか?
-
所定給付日数の3分の1以上を残して就職すると、再就職手当として残りの60%か70%が一時金で出ます。3分の2以上残っていれば70%です。ほかにも条件があるので、ハローワークで確認してください。
- 任意継続と国民健康保険、どちらが安いですか?
-
前年の所得と扶養している家族の人数で変わります。一概には言えません。辞める前に両方の金額を出してもらうのが確実です。任意継続の申請期限は20日以内なので、迷う時間はあまりありません。
- 住民税は辞めたら払わなくていいのですか?
-
払います。前年の所得に対してかかる税なので、収入がなくなっても去年の分は請求されます。ここを見落とす人が多いです。
- 退職後に副業を続けても失業手当はもらえますか?
-
働いた日や収入は申告が必要です。事業を始めていると「失業の状態」にあたらないと判断されることがあります。自己判断せず、ハローワークに事前に相談してください。
- 職業訓練を受けると給付制限がなくなると聞きました。本当ですか?
-
令和7年4月以降、離職期間中または離職日前1年以内に教育訓練を受けた場合は給付制限が解除されると厚生労働省が案内しています。対象になる訓練かどうかはハローワークで確認してください。
まとめ
- 辞めたあとは、もらう前に払うほうが先に来る
- 任意継続は20日以内、国民年金は14日以内。期限が短い
- 住民税は前年の所得にかかる。無収入の年に去年の分が来る
- 自分から辞めた場合の給付制限は、2025年4月から原則1か月に短縮された
- 早く決まれば再就職手当が出る。残り3分の2以上なら70%
- 教育訓練を受けると給付制限が解除される場合がある
- 副業を続けたまま受給するなら、必ず事前にハローワークへ申告する
辞めるかどうかは自分で決めることです。ここに書いたのは、その判断をする前に見ておいたほうがいい数字です。
この記事で確認した出典
- ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」2026年8月26日確認
- 大阪労働局「就職促進給付(再就職手当)」2026年8月26日確認
- 厚生労働省「令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます」2026年8月26日確認
- 岩手労働局・群馬労働局「令和7年4月1日以降に離職された方は『給付制限期間』が1か月に短縮されます」2026年8月26日確認
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「健康保険任意継続制度」よくあるご質問 2026年8月26日確認
- 日本年金機構「会社を退職したときの国民年金の手続き」2026年8月26日確認
- 東京都主税局「個人住民税 特別徴収の事務手引き」2026年8月26日確認

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