エージェント経由で応募したのに、書類で落ちる。推薦文まで付いているのに落ちる。納得しづらいと思います。
この疑問を説明している記事を検索すると、上位はほとんどがエージェント自身のサイトでした。自社経由で落ちる理由を、自社が説明している。書ける範囲に限りがあるのは当然だと思いませんか?
僕は反対側にいました。事業会社で採用の責任者をしていて、2年で約500人を書類から最終面接まで見ています(人数は概算です)。エージェントには1人あたり60万〜100万円払っていました。払う側から書きます。
求職者が無料で使える理由は、条文にある
まずここから。エージェントが求職者から金を取らないのは、親切だからではありません。職業安定法32条の3第2項です。
有料職業紹介事業者は、前項の規定にかかわらず、求職者からは手数料を徴収してはならない。ただし、手数料を求職者から徴収することが当該求職者の利益のために必要であると認められるときとして厚生労働省令で定めるときは、同項各号に掲げる場合に限り、手数料を徴収することができる。
職業安定法第32条の3第2項(e-Gov法令検索・2026年4月1日施行)
ただし書の例外は、施行規則20条2項が限定列挙しています。芸能家、モデル、科学技術者、経営管理者、熟練技能者。しかも取れるのは就職後6か月以内に支払われた賃金の11%(免税事業者は10.3%)以下です。
ふつうの転職では、求職者から1円も取れない。売上は全部、企業側から来ます。
企業が払う額に、法定の上限は無い
では企業からはいくら取れるのか。32条の3第1項に2つの道が書いてあります。
- 厚生労働省令で定める種類・額の手数料を徴収する場合(上限制手数料)
- あらかじめ厚生労働大臣に届け出た手数料表に基づき徴収する場合(届出制手数料)
実務で使われているのは2つめです。届け出た表のとおりに取ればよく、額の上限を定めた規定がありません。大臣が変更を命じられるのは、同条4項の2つの場合だけです。
- 特定の者に対し不当な差別的取扱いをするものであるとき
- 手数料の種類、額その他が明確に定められていないことにより、著しく不当と認められるとき
僕の会社は理論年収(基本給×12か月)の35%で契約していました。年収400万円の人なら140万円。実際には条件によって1人60万〜100万円のあいだに落ち着いていました。
同じ書類でも、経路で結論が変わる
ここが本題です。自社サイトからの応募と、エージェント経由の応募。まったく同じ職務経歴書でも、通す・通さないの判断が変わります。
| 応募の経路 | 採用側が考えていること |
|---|---|
| 自社サイト・求人媒体 | 会ってみるか。会う費用は面接1時間ぶん |
| エージェント経由 | 60万円払ってでも欲しいか。会う前に、その額を回収できる根拠が要る |
面接に呼ぶこと自体は無料です。でも採ったら60万円が出ていく。だから書類の段階から、その金額に見合うかを見ます。
「とりあえず会って話を聞いてみよう」で通していた人が、エージェント経由だと落ちる。求職者の側からは、同じことをしているのに結果だけが違って見えます。効いているのは書類の中身より、経路のほうです。
スカウトが来たのに落ちるのはなぜか
これも相談の多い形だと思います。プラチナスカウトが届いて、応募して、書類で落ちる。送っておいて落とすのか、と感じるはずです。
僕がいた会社では、スカウトを送る人と、書類を見る人と、採ると決める人が違いました。
- スカウトを送る 条件で絞った一覧に、まとめて送ります。1通ずつ職務経歴書を読み込んではいません
- 書類を見る 応募が来てから、はじめて中身を読みます
- 採ると決める 現場の部門長。ここで要件が具体になります
スカウトは条件検索の結果です。年齢、経験年数、資格、直近の職種。そこに一致したから届いた。中身を読んで送ったわけではありません。そこは分けて考えたほうが早いです。
カジュアル面談のあとで落ちるのも、同じ理由で起きます。面談する人と、決める人が別だからです。
落ちた理由を聞いても、返ってこない
不採用の理由を求職者に伝えることを義務づけた条文は、見つけられませんでした。伝えるかどうかは企業の判断です。
実務としては、まず伝えません。年齢や家族構成に触れたと受け取られれば、それだけで問題になります。エージェントに返すのも「今回は見送りで」の一言。詳しい理由を書くほど、こちらのリスクが増えます。
エージェントの担当者が「先方からは、経験のマッチ度でとのことでした」としか言わないのは、本当にそれしか聞いていないからです。隠しているわけではありません。
連絡が早いと不採用か
よく言われます。僕のところでは、こういう分かれ方をしていました。うちの運用の話として読んでください。一般則ではありません。
| 返事の速さ | 起きていたこと |
|---|---|
| 1〜2日で不採用 | 要件で外れた。資格が無い、経験年数が足りない等。読む時間が短い |
| 1週間以上かかる | 現場に回して比較している。通ることも落ちることもある |
| 連絡が来ない | こちらの不手際。まとめて処理していて漏れる |
早い不採用は書類の質より、要件との一致で決まっています。落ち込む種類の話でもない、と思います。
年齢・学歴・転職回数は、実際どう効くか
求人票から年齢の欄が消えたのは、法律が変わったからです。労働施策総合推進法9条があります。
事業主は、労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要であると認められるときとして厚生労働省令で定めるときは、労働者の募集及び採用について、厚生労働省令で定めるところにより、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。
労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 第9条(e-Gov法令検索・2026年4月1日施行)
義務が生じるのは「厚生労働省令で定めるとき」と書いてあります。省令の側に例外が置かれている構造です。だから「年齢不問」と書いてある求人でも、年齢がまったく効かないわけではありません。
僕がいた会社での実際は、こうでした。年齢そのもので落とすことはしません。ただ、部門長が「30代前半で」と言えば、要件としてそう伝わります。求人票には書けないので、選考の中で吸収されます。
転職回数は、回数より説明で見ていた
5回でも通る人がいて、2回で止まる人がいました。見ていたのは回数そのものより、直近の在籍期間と、辞めた理由が書いてあるかどうかです。
書いていないと、面接で聞くことになります。その時間がもったいないので、書類の段階で落とすこともありました。先に1行あれば済む話です。
学歴は、新卒と中途でまったく違う
新卒では見ます。判断材料が少ないからです。中途では、直近3年で何をしたかのほうがはるかに効きます。10年前の学校名より、去年の実績です。
AIで書いた職務経歴書は分かるか
分かることがあります。ただ「AIっぽいから落とす」ということはしていません。落ちるとしたら、原因は次の3つのどれかです。AIを使ったこと自体ではありません。
- 求人票の言葉と一致しない 読む側は一致を探しています。汎用的にきれいな文章より、募集要件の単語がそのまま入っているほうが通ります
- どの会社でも通る志望動機になっている これは読めば分かります。社名を入れ替えても成立する文章は、そう見えます
- 粒度が揃いすぎている 人が書くと、力の入った部分だけ厚くなります。全部が同じ密度だと、何が得意なのかが読み取れません
書類の直しは、自分の目では限界がある。僕が見ていた側からすると、落ちる書類は毎回だいたい同じ場所で落ちていた。第三者に一度通してもらうだけで、その場所が分かる。
では何を直すか
経路で結論が変わるなら、直す順番も変わります。採用側が読む順に並べます。
求人票に書いてある言葉を、職務経歴書でも使います。読む側は一致を探しています
何人、いくら、何か月。読むのは1枚目の上から3行です
10年前の経験より、いまできることを見ています
聞かれる前に書いてあると、それだけで進みます
どの会社でも使える志望動機は、読めば分かります
1つ1つは良いのに、全体でつながっていない書類が、いちばん多かった。資格も経歴も立派で、それが何に向かっているのかが読み取れない。落とした理由は、たいていここでした。
よくある質問
- 書類選考の通過率はどれくらいですか
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公的な統計は見つけられませんでした。よく出てくる数字は、エージェント各社が自社の実績として公表しているものです。母数も定義も会社ごとに違うので、横に並べて比べられる数字ではありません。
- エージェント経由で落ちた会社に、直接応募できますか
-
法律で禁じられてはいません。ただしエージェントとの契約や、企業側の応募規定で制限されている場合があります。一定期間は同一応募として扱う運用もあります。まず担当者に確認してください。
- エージェントを変えれば通りますか
-
経路が同じなら、企業が払う額は変わりません。変わるのは推薦文の質と、企業との関係の深さです。担当者が要件を正しく聞けているかのほうが効きます。
- 未経験歓迎と書いてあるのに落ちました
-
「未経験歓迎」は、その職種の経験を問わないという意味で使われます。社会人経験や、隣接する経験までは免除していないことが多いです。求人票の必須要件の欄を読み直してください。
- 書類を送ってから何日で連絡が来ますか
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うちは1〜2週間を目安にしていましたが、企業によってばらつきます。エージェント経由なら、担当者が催促できます。
出典
条文は2026年4月1日施行のものを2026年9月5日に確認しました。手数料の率と人数は、僕がいた会社の実績です。他社に当てはまるとは限りません。面接した人数は本人の概算です。
次に読むもの
- 転職エージェント経由の応募で、採用側が最初に見る3つ
- 特化型の転職エージェント10社を、採用担当2年の僕が格付け
- 20代の転職エージェント5社、求人数より担当の付き方で選ぶ
- 年収800万円からの転職エージェント4社、外資・コンサル・金融
経路で結論が変わる以上、どのエージェントを通すかは書類の中身と同じくらい効きます。推薦文を書ける担当者に当たるかどうかで、同じ書類の通り方が変わります。
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