退職代行で有給を拒まれたら。最大40日を条文で押し返す

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退職代行に依頼したら、会社が有給消化を認めないと言ってきた。この相談は多い。ただ、条文を読むと会社側の言い分には限界がある。拒否できる条件が、そもそも成り立たないことが多いからだ。

僕は採用担当を2年やって、辞める連絡を受ける側の窓口にもいた。「有給は認めない」と現場が言い出す場面を、実際に見ている。そのあと社内で何が起きたかも書く。

※ 広告を含みます。法令は e-Gov 法令検索の原文を2026年9月10日に確認しました。個別の事案の判断は労働基準監督署・弁護士にご相談ください。

目次

条文はこれ1つ。ただし後半が効く

有給をいつ取るかを決めているのは、労働基準法39条5項だ。

労働基準法39条5項「使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。」

前半で、休む日を決めるのは労働者だと書いてある。これが時季指定権だ。後半のただし書きが、会社の時季変更権になる。

ここで読み落とされやすいのが、後半の書き方だ。「他の時季にこれを与えることができる」。与えないことができる、とは書いていない。会社にできるのは、別の日にずらすことだけだ。

退職日が決まっていて、そのあと在籍しない。では「他の時季」はどこにあるのか?

ここが要点になる。退職日までの残り日数を全部有給に充てているなら、ずらす先が存在しない。ずらす先が無いのだから、時季変更権を使えない。会社が「認めない」と言っても、条文が用意した手段の外にある。

会社側で実際に何が起きるか

窓口にいた側から書く。「有給は認めない」という言葉が出るのは、たいてい現場の上長からだった。総務や人事からではない。

現場が怒る

引き継ぎが終わっていない、繁忙期だ、という理由。感情の部分が大きい

総務・人事が条文を確認する

ここでたいてい話が変わる。時季変更権の要件を満たさないと分かる

落としどころを探す

引き継ぎ資料の提出を条件にする、最終出社日をずらす、といった調整

結局は消化になる

争って得るものが会社側に無い

2つめで止まる会社が多かった。総務は分かっている。拒否を続けると労働基準監督署の話になり、そのコストのほうが高い。だから、社内で条文を確認した時点でだいたい決着する。

つまり、拒否されたときに要るのは、争うことではない。総務・人事に条文の話が届くようにすることだ。現場の上長で止まっていると、話が進まない。代行を使う価値がここにある。窓口を人事に移せる。

「事業の正常な運営を妨げる」は、どこまで認められるか

時季変更権の要件は2つある。両方そろわないと使えない。

  • 事業の正常な運営を妨げること — 単に忙しい、人手が足りないだけでは足りないとされている
  • 他の時季に与えられること — ずらす先が存在すること

退職時に問題になるのは2つめだ。1つめを会社が主張できたとしても、ずらす先が無ければ結論は変わらない。2つの条件は、どちらか一方では足りない。

逆に、在職中の有給申請なら話が別になる。繁忙期に長期で申請したときに、別の週へずらされることはありうる。退職時と在職中で、同じ条文の効き方が変わる。ここを混ぜて読むと、話がかみ合わなくなる。

残日数を先に確定させる

拒否されたときの争点は、実は「取れるかどうか」ではないことが多い。何日残っているかでずれる。

付与日数は勤続年数で決まっている。労働基準法39条の表がそれだ。

勤続年数6か月1年6か月2年6か月3年6か月4年6か月5年6か月6年6か月以上
付与日数(週5日勤務)10日11日12日14日16日18日20日

有給の時効は2年だ。労働基準法115条の「賃金の請求権を除く」側にあたり、当分の間の短縮の対象にもならない。つまり、前年の繰越と当年の付与で、最大40日たまる。

会社の管理表と自分の計算が合わないことは、実際にある。給与明細に残日数が出る会社なら、それを保存しておく。退職代行に依頼する前にスクリーンショットを撮っておく。あとから請求すると、時間がかかる。

代行の種類で、できることが変わる

ここが結果を分ける。有給消化は「協議」になるので、伝えるだけでは足りないことがある。

弁護士法72条「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で…その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。」
労働組合法6条「労働組合の代表者又は労働組合の委任を受けた者は、労働組合又は組合員のために使用者又はその団体と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する。」

やりたいこと民間の代行労働組合弁護士
有給を消化したいと伝える
残日数について会社と協議する×
拒否されたときに交渉する×
未払い分を請求する・争う××
損害賠償を言われたときに対応する××

民間の業者は、伝えることまでしかできない。会社が拒否してきたときに、そこから先へ進めない。拒否されそうな見込みがあるなら、最初から労働組合型を選ぶ。料金の差は数千円で、途中の乗り換えより安く済む。

損害賠償や懲戒の話が出たら、そこは弁護士型の領域になる。労働組合型でも対応できない。

消化中の給与はいくらになるか。3つの決め方がある

有給を取った日の賃金は、会社が勝手に決められない。選べる型が3つ、条文で決まっている。

労働基準法39条9項「使用者は…有給休暇の期間…については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、それぞれ、平均賃金若しくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金又はこれらの額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金を支払わなければならない。」
ただし書きで、労使協定があれば健康保険の標準報酬月額の30分の1にできると定めています。

計算高くなりやすい人
通常の賃金出勤したものとして、いつもどおりの給与いちばん多い型。手当が付いたまま計算される
平均賃金直前3か月の賃金総額 ÷ 総日数(労働基準法12条)残業が多かった人。ただし総日数で割るので下がることもある
標準報酬日額標準報酬月額 ÷ 30。労使協定が要る採用している会社は少ない

どれになるかは就業規則に書いてある。会社が案件ごとに選べるわけではない。「有給の日は基本給だけ」と言われたら、規則を確認する理由がここにある。通常の賃金なら、通勤手当以外の手当も乗るのが原則だ。

日給や時給で働いている人は、通常の賃金の出し方が施行規則25条に書いてある。時間給なら「その金額にその日の所定労働時間数を乗じた額」、月給なら「月給を月の所定労働日数で割った額」。1日あたりがいくらか、自分で計算できる。

退職日と最終出社日は、別に決める

有給を全部消化するなら、カレンダーの引き方が要る。ここを間違えると、日数が足りなくなる。

残日数を確定する

給与明細か勤怠システムで確認。最大40日

最終出社日を決める

引き継ぎが終わる日。ここまでは出社する

その翌営業日から、残日数ぶんを有給に充てる

土日祝は有給を消費しない。日数のカウントは営業日で数える

最後の有給の日が退職日になる

月末にするかどうかで、社会保険料と住民税の扱いが変わる

4つめを見落とす人が多い。月末退職か、月末より前かで、社会保険料の負担月数が変わる。資格を失うのは退職日の翌日なので、月末に辞めるとその月の保険料まで引かれる。前日に辞めれば1か月ぶん軽くなるが、その分は自分で国保に入る。

どちらが得かは金額しだいだ。1日ずらすだけで数万円動くことがある。退職代行に日付を伝える前に、ここを決めておく。

会社が出してきた拒否の理由と、その先

窓口にいたとき、実際に出てきた理由は3つに集まっていた。それぞれ、条文に照らすとどうなるか。

会社が言うこと条文に照らすと
引き継ぎが終わっていない有給を与えない理由になりません。時季変更権の要件は「事業の正常な運営を妨げる」ことと「他の時季に与えられる」ことの2つで、引き継ぎの未了はそれ自体では要件を満たしません
繁忙期だから在職中なら別の時季へずらす根拠になりえます。ただし退職日が決まっているなら、ずらす先がありません
就業規則で退職前の有給を認めていない労働基準法は最低基準です。13条により、法律に達しない労働条件を定めた部分は無効になります

3つめを言われたときがいちばん分かりやすい。就業規則で法律を下回ることはできない。ここを書面で言ってきたなら、それはむしろ材料になる。

ただ、正論をぶつけて勝つ話にしないほうがいい。会社が引きたいのは、たいてい面子の部分だ。引き継ぎ資料を先に渡す、貸与品を先に送る。感情の材料を減らすと、話は早く終わる。

拒否されたときの順番

  1. 書面かメールで、時季指定を出す — 「◯月◯日から◯月◯日まで、年次有給休暇を取得します」。日付を明記して記録を残す
  2. 窓口を人事・総務にする — 現場の上長で止まっていると条文の話が届かない。代行はここで効く
  3. 会社の回答を書面でもらう — 拒否の理由を文字で出させる。「事業の正常な運営を妨げる」とだけ書かれても、ずらす先の提示が無ければ要件を満たさない
  4. 労働基準監督署に相談する — 39条違反として動ける。無料。会社名を出さずに一般相談から始めてもいい

1つめが抜けると、あとで「請求されていない」と言われることがある。口頭は残らない。代行に依頼していても、時季指定は本人名義で出せる。

4つめまで行くことは、僕が見た範囲では多くなかった。3つめで会社が理由を書けずに、消化に落ち着く。

消化と買い取り、どちらを選ぶか

有給の買い取りに、法律上の義務は無い。労働基準法の原文に「買取」「買上」という語は1つも出てこない。検索して確認した。

ただ、退職時は交渉の余地がある。僕は自分が辞めるとき、買い取り制度の無い会社に自分から提案した。退職日まで働く代わりに、残っていた40日を最低賃金でいいから買い取ってほしい。結果は392,000円だった。

全部消化する買い取りを交渉する
金額通常の賃金で計算される(労働基準法39条9項)会社との合意しだい。最低賃金での提示もありうる
会社の義務ある無い
会社側の受け取り方その日から出社しない引き継ぎ期間が延びる。会社に利がある
代行で扱えるか労組・弁護士なら協議できる同じ。民間の業者は入れない

金額だけで見れば、消化のほうが有利になることが多い。消化なら通常の賃金で計算されるからだ。買い取りは合意額で、最低賃金でも違法ではない。

それでも僕が買い取りを選んだのは、辞める時期を自分で決めたかったからだ。金額の最大化とは別の理由がある人もいる。実額の出し方は別の記事に書いています。

よくある質問

会社が有給消化を認めないと言っています

労働基準法39条5項のただし書きは「他の時季にこれを与えることができる」と書いています。退職日が決まっていてずらす先が無いなら、この手段は使えません。書面で時季指定を出し、拒否の理由を書面でもらってください。

引き継ぎが終わっていないと言われました

引き継ぎは有給を与えない理由になりません。ただし現場の心証には効きます。引き継ぎ資料を作って渡してから消化に入ると、話が早く進みます。

退職日はいつにすればいいですか

残日数を全部消化できる日付を逆算します。最終出社日と退職日は別で構いません。社会保険料と住民税の扱いが月末退職かどうかで変わるので、そこも合わせて決めてください。

民間の退職代行でも有給消化はできますか

伝えることはできます。ただし会社が拒否してきたとき、そこから交渉に入れません。弁護士法72条の線があります。拒否されそうなら労働組合型を選んでください。

有給の残日数が会社の管理表と違います

給与明細に残日数が出る会社なら、依頼前にスクリーンショットを保存してください。付与は勤続年数で決まっており、時効は2年です。前年の繰越と合わせて最大40日になります。

有給を買い取ってもらえますか

法律上の義務はありません。労働基準法に「買取」という規定はありません。退職時に限れば交渉の余地がありますが、金額は合意しだいです。消化できるなら消化のほうが金額は大きくなります。

消化中に転職先で働けますか

在籍中なので、就業規則の副業規定にかかります。二重就労は労働時間の通算の問題も出ます。開始日は退職日の翌日にしておくのが安全です。

この記事で確認した資料


有給の金額の出し方と、退職金の扱いは別の記事にまとめてあります。

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この記事を書いた人

会社員の頃から副業を始めて5年で副業でのトータル収益1,000万円以上。大きく稼ぐより、コツコツ安定して副業収益を作ることが得意。最初はFXで200万円マイナスを出した経験、会社の代表8年目の財務、税金関係の経験をブログにして書いていきます。

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