会社が副業を禁止している。FXをやったら処分されるのか。そもそもFXは副業なのでしょうか?
厚生労働省のモデル就業規則を原文で読むと、対象になっているのは「他の会社等の業務」でした。FXは雇用でも業務委託でもありません。そしてバレる経路は住民税ひとつで、そこはアルバイトと扱いが違います。
就業規則が禁じているのは「他の会社等の業務」
厚労省のモデル就業規則は、平成30年1月に「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という条文を削除して、こう書き換えられています。
労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
厚生労働省 モデル就業規則(「副業・兼業の促進に関するガイドライン」より)
文言は「他の会社等の業務に従事する」。アルバイト、業務委託、他社の役員。FXの取引は、そのどれでもありません。雇われてもいないし、業務を受託してもいない。自分の資金を自分で動かしているだけです。
そもそも副業禁止の規定に、どこまで効力があるのか。禁止できるのは4つの場合だけという整理は別記事に書きました。就業規則に書いてあるだけでは、懲戒処分は認められていません。
バレる経路は住民税ひとつ
経路は実質的に住民税ひとつです。会社は給与から住民税を天引きしています。その額は市区町村から会社に通知される。副業ぶんが上乗せされれば、額が合わなくなる。
ここで、FXとアルバイトの扱いが分かれます。
| 所得の区分 | 住民税を「自分で納付」にできるか | |
|---|---|---|
| FX | 先物取引に係る雑所得等(申告分離課税) | できる |
| アルバイト・パート | 給与所得 | できない |
| 業務委託・せどり等 | 事業所得または雑所得 | できる |
確定申告書の第二表に「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」という欄があります。ここで「自分で納付」を選ぶ。すると納付書が自宅に届きます。会社に通知は行きません。
FXの利益は「給与以外」なので、この欄を使えます。アルバイトの給料は給与所得なので、この欄の対象外です。ここが決定的な違いです。
そもそも確定申告が要るのか
会社員でFXの利益が出た場合、給与以外の所得が年20万円を超えると所得税の確定申告が必要です(給与1か所・全額源泉徴収の場合)。20万円以下なら所得税の申告は不要ですが、住民税の申告は別に必要になります。
| FXの年間利益 | 所得税の確定申告 | 住民税 |
|---|---|---|
| 20万円を超える | 必要 | 確定申告で完了。第二表で「自分で納付」を選ぶ |
| 20万円以下 | 不要 | 市区町村へ住民税の申告が必要 |
| 損失が出た | 不要(ただし下記) | — |
税率は約20.315%(所得税15%+地方税5%+復興特別所得税)。給与とは切り離して計算します。いくら稼いでも税率は上がりません。そのかわり損が出ても給与から引けない。
負けた年こそ申告する意味があります。損失は翌年以後3年間繰り越せますが、負けた年に申告していないと使えません。しかも取引しなかった年も連続して出し続ける必要があります。
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公務員は条文が違う
会社員と同じには考えられません。国家公務員法に、こう書いてあります。
職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。
国家公務員法第103条(私企業からの隔離)e-Gov法令検索・2026年7月31日施行
104条では、報酬を得ていかなる事業に従事するにも許可が要るとされています。
- 103条が禁じているのは「役員等の兼職」と「自ら営利企業を営むこと」
- 104条が対象にしているのは「報酬を得て」事業に従事すること
住民税の納付方法は、申告書のチェック欄1つで決まる。ただし副業の種類によっては普通徴収を選べない。自分がどちらに当たるかは、提出してからでは直せない。
どこから確認するか
「他の会社等の業務」ならFXは対象外と読めます。「資産運用を含む」と書いてあれば別です
超えるなら確定申告。超えなくても住民税の申告は要ります
給与以外の所得に係る住民税の徴収方法の欄です
届けば会社への通知は行っていません
繰越控除は、損失が出た年に申告していないと使えません
1から順に。3を飛ばすと、会社に通知が行きます。
よくある質問
- FXは副業に当たりますか
-
就業規則の書き方によります。厚労省のモデル就業規則は「他の会社等の業務に従事すること」を対象にしていて、FXの取引はそこに当たりません。自社の規則が「資産運用を含む」としているなら、対象になりえます。
- 「自分で納付」を選べば絶対にバレませんか
-
住民税の経路は防げます。ただし会社に申告する年末調整の書類や、同僚からの伝聞など別の経路はあります。税の手続きで防げるのは住民税だけです。
- 利益が20万円以下でも申告は要りますか
-
所得税の確定申告は不要ですが、住民税の申告は必要です。お住まいの市区町村のページを確認してください。
- 損失が出た年はどうしますか
-
申告しておくと、損失を翌年以後3年間繰り越せます。取引しなかった年も連続して申告書を出し続ける必要があります。
- 公務員はFXをやっていいですか
-
国家公務員法103条・104条が禁じているのは役員等の兼職、自ら営利企業を営むこと、報酬を得て事業に従事することです。自己資金の取引がこれに当たるかは条文から読み取れませんでした。所属先の規程で確認してください。
この記事で確認した資料
条文は2026年9月9日にe-Gov法令検索で原文を確認しました。国家公務員法は2026年7月31日施行。就業規則は会社ごとに違います。制度は変わります。
次に読むもの
- 副業が会社にバレる原因は住民税です。ただし2026年、その仕組みが2つ変わりました
- 就業規則の副業禁止に、どこまで効力があるのか。厚労省の資料を原文で読みました
- FXで負けた年に確定申告しないと、3年ぶん損します
- FXで200万円負けてから、累計プラス500万円までにやった5つ
制度の確認が済んだら、次は中身です。会社員が続けられる取引の頻度と、負けの額を揃える方法を、約定履歴つきで書きました。
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