持ち家を役員社宅にすれば、家賃を会社の経費にできる。そう聞いたことはありませんか?
家賃の計算より先に、確かめることが3つあります。ひとつは、住宅ローン控除が消えることがあるという話です。
やり方は2つある。効いてくるものが違う
| 形 | 何が起きるか |
|---|---|
| ① 個人が法人に貸す(自分が所有したまま) | 家賃収入が個人の不動産所得になる。住宅ローンの扱いが変わる |
| ② 法人が買い取る | 個人に譲渡所得。法人側に登録免許税・不動産取得税。住宅ローンは完済することになる |
調べる人が多いのは①です。手続きが軽く見えるからです。詰まるのも①のほうでした。
① 住宅ローン控除の要件を読む
国税庁が挙げている共通の適用要件に、こう書いてあります。
1 住宅の新築等の日から6か月以内に居住の用に供していること。
2 この特別控除を受ける年分の12月31日まで引き続き居住の用に供していること。国税庁 No.1211-1「住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」
「引き続き居住の用に供していること」が毎年の要件です。自宅を法人に貸して、法人から社宅として借りる形にしたとき、この要件を満たすのでしょうか?
控除の額は年末残高から計算します。残り10年あるなら、10年ぶんを賭けることになる。家賃を経費にして浮く額と、並べて比べてください。ここを飛ばさないでください。
住宅ローンの契約そのものも見る
税とは別に、金融機関との約款があります。住宅ローンは自己が居住することを前提にした商品です。賃貸に出す場合の扱いは契約書に書いてあります。
黙って貸すと、一括返済を求められることがあります。ここは税理士の範囲外なので、借りている金融機関に直接聞くしかありません。
② 家賃を受け取ると、確定申告の扱いが変わる
法人から家賃を受け取れば、個人の不動産所得になります。ここまでは分かりやすい話です。
見落としやすいのはこの先です。国税庁は「給与所得者で確定申告が必要な人」を7つ挙げていて、その4番目にこれがあります。
同族会社の役員などで、その同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている人
国税庁 No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」
金額の条件が付いていません。「20万円を超えたら」ではない。1円でも受け取っていれば申告が必要という書き方です。
③ 家賃をいくらにするか
2方向の金額を決めることになります。会社が個人に払う家賃と、個人が会社に払う家賃です。
- 会社 → 個人 相場からかけ離れていると、差額の扱いを問われます。近隣の賃料を調べて根拠を残します
- 個人 → 会社 No.2600の賃貸料相当額以上を払っていれば給与課税されません。小規模な住宅なら固定資産税の課税標準額から計算します
2つめの計算は自社所有の社宅と同じです。持ち家でも、法人の名義で借りていれば「他から借り受けた住宅」の扱いになります。区分の判定を先に済ませてください。
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住宅ローン控除が消えるかどうかは、自分の契約書と登記の状態で変わる。ここを間違えると、取り返しがきかない金額になる。着手する前に一度当てておいたほうがいい。
どこから手をつけるか
失う可能性がある額です。ここが最初の判断材料になります
約款の話です。税理士では答えが出ません
小規模な住宅かどうかを判定し、固定資産税の課税標準額から出します
近隣の賃料。相場から離れると説明が要ります
役員と会社の取引なので、議事録も残します
1と2で答えが出ないうちに、3から先を進めないでください。順番を逆にすると、契約を巻き直すことになります。
よくある質問
- 持ち家を社宅にすると、いくら得しますか
-
会社が払う家賃が損金になり、個人は賃貸料相当額との差額で見ます。ただし住宅ローン控除を失う場合、その額と比べないと損得が出ません。残り年数と年末残高を先に出してください。
- 住宅ローンを完済していれば問題ないですか
-
控除もローンの約款も関係なくなります。残るのは不動産所得の申告と、賃貸料相当額の計算です。
- 家族名義の家でもできますか
-
所有者と会社の間で賃貸借契約を結ぶ形になります。同族会社の役員が受け取る場合の申告義務は、受け取る人ごとに見ます。
- 会社に売却したほうが早いですか
-
個人に譲渡所得が出ます。居住用財産の特別控除が使えるかどうかで結論が変わるので、金額を出してから比べてください。
- 賃貸料相当額はどう計算しますか
-
No.2600の算式です。小規模な住宅なら固定資産税の課税標準額から計算します。家賃の50%を使うのは小規模でない場合だけです。
この記事で確認した資料
- No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(国税庁)
- No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人(国税庁)
- No.2600 役員に社宅などを貸したとき(国税庁)
- 所得税法(e-Gov法令検索)
2026年9月5日に原文を確認しました。住宅ローン控除の可否と、金融機関の約款の扱いは、この記事では確認できていません。実行前に税務署・税理士・金融機関へ。制度は変わります。
次に読むもの
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持ち家の社宅化は、税だけで判断できません。金融機関との契約と、失う控除の額を並べてから決める話です。数字を出す段階で見てもらう相手を決めておくと早く済みます。
PR:上のリンクはアフィリエイト広告です。運営者は法人代表7年、確定申告は8年すべて自分でやってきました。物件は賃貸なので、持ち家の社宅化は実行していません。この記事は国税庁とe-Gov法令検索の原文にもとづいて書いています。
