執筆・監修:ちゃんみ(元・採用責任者。新卒・中途あわせて約500人を書類から最終面接まで担当/法人代表7年/確定申告8年)。この記事の数字と制度は、公式資料を原文で確認した日付つきで書いています。
副業の確定申告を調べていると、必ずこの分かれ道に当たります。事業所得で出すのか、雑所得で出すのか。
そして「300万円以下なら雑所得」という説明を、あちこちで見ます。僕も最初はそう覚えていました。
ただ、国税庁の通達を原文で読むと、書いてあることが違いました。金額の話ではありません。
まず、雑所得は「余りもの」です
所得税法35条1項の定義がそっけないので、そのまま引きます。
雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう。
所得税法 第35条第1項(e-Gov法令検索 2026年8月27日確認)
他のどれにも当てはまらないものが雑所得です。積極的な定義がありません。だから「事業所得に当たるか」を先に考えることになります。
その事業所得の定義が27条です。
事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得(山林所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。
所得税法 第27条第1項(e-Gov法令検索 2026年8月27日確認)
「その他の事業」としか書いていません。どこからが事業なのかは、条文だけでは決まりません。そこを埋めているのが通達です。
通達に書いてあるのは、帳簿の話でした
所得税基本通達35-2の(注)が、この記事の核心です。原文をそのまま引きます。
事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する。
所得税基本通達 35-2(注)(国税庁 2026年8月27日に原文で確認)
そして続きがこうです。
なお、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合(その所得に係る収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除く。)には、業務に係る雑所得(中略)に該当することに留意する。
所得税基本通達 35-2(注)(国税庁 2026年8月27日に原文で確認)
読み方を整理します。主語は帳簿です。
-
社会通念上、事業と称する程度かどうかで判定する
-
原則として業務に係る雑所得になる
-
この括弧書きで除外される。雑所得にはならない
300万円という数字は出てきます。ただしそれは「帳簿が無いとき」の例外を作るための括弧の中にあります。「300万円以下なら雑所得」という切り方は、通達の構造と逆です。
帳簿を付けて事業所得にするか、雑所得のままにするか。線引きを自分で決めきれないなら、副業の申告に慣れた税理士を無料で紹介してもらえる。
何が変わるのか。金額で見ます
区分が変わると、税金の計算が2か所で変わります。どちらも条文に根拠があります。
① 赤字を給与と相殺できるか
損益通算の条文は所得税法69条1項です。
総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額を計算する場合において、不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、政令で定める順序により、これを他の各種所得の金額から控除する。
所得税法 第69条第1項(e-Gov法令検索 2026年8月27日確認)
並んでいるのは不動産・事業・山林・譲渡の4つだけです。雑所得は入っていません。
つまり副業が赤字になったとき、事業所得なら本業の給与から引けます。雑所得だと引けません。
| 事業所得 | 雑所得 | |
|---|---|---|
| 副業が30万円の赤字 | 給与所得から30万円引ける | 引けない |
| 根拠 | 所得税法69条1項 | 同条に列挙されていない |
② 青色申告特別控除を使えるか
青色申告ができる人は143条で決まっています。
不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務を行なう居住者は、納税地の所轄税務署長の承認を受けた場合には、確定申告書及び当該申告書に係る修正申告書を青色の申告書により提出することができる。
所得税法 第143条(e-Gov法令検索 2026年8月27日確認)
ここでも雑所得は入っていません。雑所得では青色申告そのものができません。
国税庁は控除額をこう案内しています。
青色申告者に対しては種々の特典がありますが、その1つに所得金額から55万円(一定の要件を満たす場合は65万円)または10万円を控除するという青色申告特別控除があります。
国税庁 タックスアンサー No.2072 青色申告特別控除(令和7年4月1日現在法令等。2026年8月27日確認)
55万円の控除には複式簿記での記帳と、貸借対照表・損益計算書の添付、期限内申告が要ります。65万円にするには、さらに追加の要件があります。
では帳簿さえ付ければ事業所得になるのか
そうとは書かれていません。通達が判定基準としているのは「社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうか」です。帳簿はその判定に入るための前提であって、帳簿があれば自動的に事業所得になるという書き方ではありません。
帳簿が無ければ、判定に進む前に原則として雑所得になる。帳簿があれば、活動の実態で判定される。順番はこうなっています。
売上と経費を、いつ・いくら・誰と、の形で残します
会計ソフトでも手書きでも構いません。残っていることが条件です
継続しているか、反復しているか、労力と時間をかけているか
青色申告特別控除を取るなら承認が要ります
55万円の控除にはここまで必要です
開業届と青色申告承認申請書の出し方は別の記事に書きました。提出期限の案内が、よく見る説明と違っていた話です。
通達が見ているのは帳簿の有無だった。つまり、記帳を始めた時点で分岐の片方に乗れる。会員登録だけなら費用はかからないので、今年の分から付け始めるのが早い。
副業の種類で見ると
通達35-2は、雑所得になるものを例示しています。副業で関係しそうなものを抜き出します。
| 通達35-2の例示 | 副業でいうと |
|---|---|
| 原稿、さし絵、作曲、レコードの吹き込み若しくはデザインの報酬、放送謝金、著作権の使用料又は講演料等に係る所得 | ライティング、イラスト、デザインの受注 |
| 営利を目的として継続的に行う資産の譲渡から生ずる所得 | せどり・物販 |
| 動産の貸付けによる所得 | レンタル業 |
| 金銭の貸付けによる所得 | 貸付け |
ただしこの例示には、頭に条件が付いています。「事業所得又は山林所得と認められるものを除き」です。せどりもライティングも、事業と認められる程度に行っていれば事業所得の側に来ます。最初から雑所得と決まっているわけではありません。
- 副業の収入が300万円以下だと、必ず雑所得ですか
-
違います。通達に書かれているのは帳簿書類の保存の有無です。300万円は、帳簿が無い場合の例外を定めた括弧の中に出てくる数字です。
- 雑所得でも経費は引けますか
-
引けます。収入金額から必要経費を差し引いて計算します。引けないのは損益通算と青色申告特別控除です。
- 帳簿は手書きでもいいですか
-
通達は「帳簿書類の保存」としか言っていません。ただし55万円の青色申告特別控除を取るには複式簿記による記帳が要件です。
- 会社員の副業でも事業所得にできますか
-
給与所得と事業所得は両立します。判定されるのは副業の活動が社会通念上の事業に当たるかどうかで、本業の有無そのものが基準になっているわけではありません。
- 雑所得のまま申告してもいいですか
-
問題ありません。損益通算と青色申告特別控除が使えないだけです。赤字が出ない規模なら差は小さくなります。
- いつから帳簿を付ければいいですか
-
その年の取引を記録するので、年の途中からでは記録が欠けます。始めた時点から付けるのが確実です。
帳簿さえあれば形は整います。ただし付け方が合っているかは、付けている本人には判断しにくいところです。
青色申告まで狙うなら、最初の1年だけでも見てもらうと、その後は同じやり方で回せます。
帳簿と青色申告を税理士に相談する(無料)※ 広告リンクです。無料で相談でき、合わなければ断れます。金額と対応範囲は必ず契約前にご確認ください。
この記事で見た条文と資料
- 所得税法(e-Gov法令検索)
- 所得税基本通達 法第35条《雑所得》関係(国税庁)
- No.2072 青色申告特別控除(国税庁)
- 「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(国税庁)
通達は国税庁のページから原文を取り出して読みました。条文は2026年8月27日にe-Gov法令検索で確認しています。要約記事は経由していません。
僕は8年ぶん確定申告をしていますが、この通達が変わったことは後から知りました。金額の基準だと思い込んでいたので、原文を読んで前提が違っていたと分かりました。
