面接官は、あなたの何を最初に見ているか。
僕は採用する側にいました。事業会社で採用人事の責任者をしていたので、新卒も中途も、書類から最終面接まで自分の目で見てきました。人数にすると約500人です。
見ていたのは、たった3つだけです。
- 同業他社のなかで、なぜうちなのか
- 3年後、5年後に何をしていたいか
- いま何ができて、どこで貢献できるか
これだけです。意外でしょうか?
受け答えのうまさは、思っているほど効きません。3つが揃っていれば採っていましたし、揃っていなければ話がうまくても見送りでした。
採用側が最初に見る3つ
「理念に共感しました」。これで止まる人が多い。
同じ業界に会社は何十社もあるなかで、事業の中身でも規模でもやり方の違いでもいいので、どこか1つを具体的に挙げてなぜここなのかを説明できる人は、それだけで残していました。
壮大な話は要りません。「この分野で一人で回せるようになりたい」で十分。
ここが空白のまま面接が進むと、教育に時間をかけた半年後にあっさり辞めていく姿のほうが先に浮かんでしまいます。採る側がいちばん恐れているのは、それ。
「頑張ります」は評価の対象外。
前職で担当した仕事を1つ挙げて、そこで身についたものが応募先のどの業務につながるのかまで自分の言葉でつなげられる人に、即戦力としての値段がつきます。
才能の話ではありません。全部準備で補えます!
話し方が不器用でも、この3つが整理されていれば採っていました。
逆に、揃っていない人はどうなるか
その場で見送りを決めます。厳しいと思われるでしょうか。ただ、他の質問を続けても結論は変わりませんでした。
冷たく聞こえるかもしれません。でも、採る側にはそれだけの理由があります。次に書きます。
※ 広告を含みます。どこに相談するか決まっていないなら、まず候補を出してもらう形が早いです。
なぜこの3つを見るのか。1人採るのに60万〜100万円かかるから
エージェント経由で採用が決まると、会社は紹介手数料を払います。求人媒体の掲載料とは別に、1人決まるごとに発生する費用です。
僕が契約していたのは理論年収の35%。ここで多くの人が誤解します。
理論年収は求人票に出ている年収とは別物で、基本給×12ヶ月で計算されます。住宅手当も残業代も賞与も、土台には入りません。
| 月の基本給 | 理論年収(×12) | 手数料35% |
|---|---|---|
| 18万円 | 216万円 | 75万6,000円 |
| 20万円 | 240万円 | 84万円 |
| 22万円 | 264万円 | 92万4,000円 |
| 25万円 | 300万円 | 105万円 |
※ 35%は僕が契約していた率です。会社やエージェントによって違います。理論年収の定義も契約ごとに変わります。
ならして1人あたり60万〜100万円。ここに収まることがほとんどでした。年収500万円の求人だからといって175万円になるわけではありません。
反対に、自社の求人を見て直接応募してきた人にかかるのは掲載料だけ。何人採っても増えません。
では直接応募だけにすればいいのか。そうはしませんでした。なぜだと思いますか?
なぜ、それでもエージェントを使い続けたか
紹介される人の質が、明らかに良かったからです。
エージェントは決まらなければ1円も入らない成功報酬なので、通らなそうな人をいくら大量に送り込んでも、自分たちの手間が増えるだけで終わります。
結果として、こちらに届く時点ですでに一段ふるいにかけられていて、面接に呼ぶまでの手間が減り、決まる確率も上がります。数十万円は、そこに払っていました。
採用が止まったときの損失のほうが、はるかに大きいんです。人が足りないまま数か月も回していると、残業と負担が既存の社員に寄っていって、先にそちらが辞めていきます。
会社が数十万円を上乗せしている以上、見る目は当然きびしくなります。同じ実力でも、期待値の高いところからスタートする。
不利になるわけではない。準備してきた人が、そのぶん強く評価されるということ。3つを言えるようにしておけば、むしろ有利に働きます。
受け答えが上手くても、見送った人がいます
印象はいいのに採らなかった人がいる。理由は2つです。
1つ1つは良いのに、全体でつながっていない
面接官は同じことを角度を変えて何度も聞きます。志望動機を聞き、やりたいことを聞き、前職でいちばん時間を使った仕事を聞き、そこで何を判断してきたかを聞く。
そこでズレが出る人がいます。志望動機で語ったことと、将来やりたいと言ったことと、これまでの経験が、聞けば聞くほど別の方向を向いていく状態。
用意した答えを並べているだけだと、ここで分かります。
志望動機が、どの会社でも使える文章になっている
「成長できる環境だと思って」「風通しの良さに惹かれて」。心当たりはありませんか?
そのまま他社に出せますよね。自分の志望動機、書き換えずに何社に出せますか? ここで止まっている人は、その時点で決まりでした。
うまく話せるかどうかより、筋が通っているか。見ていたのはそこです。
エージェントの推薦文は、鵜呑みにしていません
エージェント経由の応募には推薦文が付いてきます。求職者からは中身の見えない書類。
正直に書きます。あそこにいいことしか書かれていないのは、採用側も分かっています。
悪いことを書けば決まらない。決まらなければ報酬が入らない。構造上そうなるので、推薦文は参考程度にとどめておいて、実際の判断は面接の場でやっていました。
担当者がその業界を分かっている場合です。「前職のこの経験は、御社のこの部署のこの課題にそのまま使えます」とまで書いてあると、読み手の姿勢が変わって面接の質問まで変わります。
どの求人にも使い回せそうな文章は、正直、流し読み。
業界を分かっている担当者に当たるかどうか。ここが総合型と特化型の分かれ目になります。
総合型と特化型、どちらを使うか
行きたい業界や働き方が決まっているなら特化型。まだなら総合型で幅を見るほうが先。
| 総合型 | 特化型 | |
|---|---|---|
| 求人の幅 | 広い | 狭い |
| 担当者の業界知識 | 担当が広く、浅くなりやすい | その業界だけを扱う |
| 推薦文 | 汎用的になりやすい | 具体的に書ける |
| 向く人 | 業界を決めきれていない | 行き先が決まっている |
採用側で推薦文を読んだときの手応えが違ったのは、はっきり特化型でした。その業界で実際に使われている言葉で書いてあるので、こちらが補って読む必要がありません。
そして特化型は求人数が少ない。1社だけだと選択肢が足りません。
総合型を1つ、特化型を1〜2つ。この組み合わせが現実的です。
なぜ複数使うといいのか
同じ人が複数のエージェントから応募してくることがあります。先に紹介したほうが手数料を受け取る決まりになっているので、そのぶん担当者の動きが速くなり、日程も前倒しで組まれます。
もう1つ。担当者との相性です。話が噛み合わない人に当たったとき、1社しか使っていないと乗り換え先がなく、転職活動そのものが止まってしまいます。
目的別に、特化型を並べます
うちで提携しているサービスから、対象がはっきりしているものを目的別に整理しました。求職者側の利用はいずれも無料。
なぜ求職者は無料なのか
法律でそう決まっているからで、裏は何もありません。
厚生労働省の「職業紹介事業の業務運営要領」第6に、求職者から手数料を取れる職業が限定列挙されています。原文を読みました。
- 芸能家、モデル
- 経営管理者、科学技術者、熟練技能者 ―― 年収700万円を超える場合に限る
会社員の転職はここに入りません。つまり無料。お金の出どころが会社側というだけの話です。
※ 以下には広告を含みます。並び順は報酬額と無関係で、対象が絞られている順です。各社の情報は2026年8月31日に公式サイトで確認しました。
先に一覧を置きます。どれが自分に当たるかを見てから、下の説明に進んでください。
| 目的 | サービス | 公式サイト |
|---|---|---|
| どこに相談するか決まっていない | 転職エージェントナビ(担当者を選べる) | 公式サイトを見る |
| 20代・未経験から動く | 応援キャリア | 公式サイトを見る |
| 20代・未経験から動く | 猫の手AGENT | 公式サイトを見る |
| M&A業界を目指す | M&A BEGINNERS | 公式サイトを見る |
| 人材業界を目指す | HR CAREER AGENT | 公式サイトを見る |
| DX・戦略・AIコンサル | NewMA | 公式サイトを見る |
| 外資系・ハイクラス | Samurai Job | 公式サイトを見る |
| リモートワークで探す | Remoful | 公式サイトを見る |
| 海外経験・語学を活かす | The Beyond Border | 公式サイトを見る |
| ベトナムで働く | べとわーく | 公式サイトを見る |
| 女性向けに相談したい | type女性の転職エージェント | 公式サイトを見る |
| 身体障害があり配慮の相談をしたい | U三 | 公式サイトを見る |
| まず求人だけ眺めたい | Jobmore | 公式サイトを見る |
20代・未経験から動くなら
20代には「教える前提」で予算を組める枠があります。経験より伸びしろに値段がつくので、実績が薄くても志望動機と将来像さえ言えれば十分に勝負になる。ここは年齢が武器です。
20代だけを扱うところも。
M&A業界を目指すなら
未経験からの転職が起きる分野です。そのわりに選考の型が独特で、財務や法務の話が普通に出てきます。業界を分かっている担当者がいるかどうかで通過率が変わる領域。
人材業界を目指すなら
採用側にいて感じたこと。人材業界の人は「採る側の事情」を知っている。志望するなら、その視点を面接で出せると強い。
DX・戦略・AIコンサルなら
理論年収が高い分野なので手数料の絶対額も大きくなり、そのぶん会社側が面接にかける時間も期待値も跳ね上がります。準備なしで受けると、まず通りません。
外資系・ハイクラスなら
課長・マネージャー以上の層。運営会社は1988年設立、有料職業紹介の許可番号は13-ユ-010227。
リモートワークで探すなら
求人票の「リモート可」、実際は週3出社だった。そんな話を聞いたことはありませんか。条件そのもので絞れるところを使うほうが早いです。
海外経験・語学を活かすなら
留学経験者と帰国子女を専門に扱う会社。許可番号13-ユ-311931、所在地は東京都中央区銀座。
ベトナム(ホーチミン・ハノイ)に絞ったところも。
女性向けに相談したいなら
※ 公式サイトの自動取得が制限されていたため、うちで内容を確認できていません。条件はご自身でご確認ください。
身体障害があり、配慮の相談をしたいなら
※ こちらも公式サイトの自動取得が制限されていたため、うちで内容を確認できていません。
まず求人だけ眺めたいなら
面談まではまだ、という段階なら求人検索から。
エージェントを使わないほうがいい人
採用側にいたので正直に書きます。次に当てはまるなら、直接応募のほうが有利になることがあります。
- 行きたい会社が1社に決まっている人。直接応募を受けているなら、手数料がかからないぶん会社側の壁が下がる
- 知人の紹介で入れる人。手数料ゼロ、しかも社内に人物の保証人がいる。いちばん強い
- 年収を大きく下げてでも入りたい会社がある人。手数料は理論年収に連動するので会社の負担は下がる。ただし担当者の熱量も下がります
逆に、在職中で時間が取れない人ほどエージェントが効きます。平日の日程調整も、言い出しにくい年収の交渉も、こちらの代わりに動いてくれるからです。
有給の残日数や入社日の調整も、自分で切り出すより通ります。
辞めるタイミングとお金の順番は、別の記事に整理しました。
採用側から見て、どう使うか
いくらの求人が来るか。それでいまの立ち位置が分かります。ここではまだ応募しません。
業界を絞らないまま応募先を増やすと、志望動機がどの会社にも出せる文章に寄っていきます。落ちる人の典型。
業界を分かっている担当者に当たると、推薦文の中身が変わります。
同業他社のなかでなぜここか。3年後に何をしていたいか。いま何ができるか。口で言えるようにしてから面接に行ってください。
年収も入社日も、自分で言うより通ります。会社は手数料を払う前提なので、交渉自体は想定内。
4番目が抜けている人が、本当に多いんです!ここが揃っているかどうかで決めていました。
※ 広告を含みます。登録・利用は無料です。
よくある質問
- 面接で最初に見られているのは何ですか
-
僕が見ていたのは3つです。同業他社のなかでなぜうちなのか、3年後に何をしていたいか、いま何ができてどこで貢献できるか。この3つが整理されている人は即決していました。
- 転職エージェントは本当に無料ですか
-
無料です。職業安定法で求職者から手数料を取れる職業が限定されています。芸能家・モデルと、年収700万円超の経営管理者・科学技術者・熟練技能者のみ。会社員の転職は含まれません。
- 会社が払う手数料はいくらですか
-
率としては理論年収の35%でした。ただし理論年収は基本給×12ヶ月で計算され、手当も賞与も入りません。実額は1人あたり60万〜100万円に収まることがほとんどです。制度上は、支払われた賃金額の11.0%を上限とする「上限制手数料」と、各社が厚生労働大臣に届け出た額を取る「届出制手数料」の2つがあり、人材紹介では届出制が主流。
- エージェント経由だと選考は厳しくなりますか
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期待値は上がります。ただ、紹介される人の質が直接応募より良かったので、その前提で見ていました。厳しくなるというより、準備してきた人が有利になります。
- 推薦文で有利になりますか
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担当者がその業界を分かっていれば有利になります。どう活きるかが具体的に書いてあると読み方が変わる。使い回しに見える文章は、あまり見ていませんでした。
- 何社くらい登録すればいいですか
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総合型を1つ、特化型を1〜2つ。多すぎると日程の管理ができなくなります。
- 在職中でも使えますか
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むしろ在職中のほうが向いています。日程調整と条件交渉を代わりにやってもらえるからです。
- エージェント経由だと年収は下がりますか
-
下がりません。手数料が理論年収に連動するので、年収を下げるとエージェント側の報酬も下がります。交渉は同じ方向を向きます。
まとめ
- 採用側が最初に見るのは①同業他社のなかでなぜここか ②将来やりたいこと ③いまできることの3つ
- 見ていたのは話のうまさより、筋が通っているか
- 推薦文は鵜呑みにされない。ただし業界を分かっている担当者のものは効く
- 会社はエージェント経由に1人あたり60万〜100万円を上乗せしている。だから期待値が上がる
- 総合型を1つ、行き先が決まっているなら特化型を1〜2つ
- 転職エージェントを使わない方がいい人を、採用側から3つ
- 書類選考に落ちる理由を、60万円払っていた側から書きます
- 退職代行の費用より先に、確認しておくお金がある
- 書類選考で年齢を理由に落とすのは法違反です。例外は6つ
- 未経験歓迎なのに落ちる。その1行は法律のために書かれている
- 求人票に2024年から増えた3つ。変更の範囲と更新上限
- 有給が40日になるのは勤続7年6か月から。それ以上は増えない
- 人材業界の転職難易度。1人60万円払う側から見た3つ
- キャリアコーチングが意味ない人は3つ。面接した側から
- 採用担当の転職先は5つ。500人面接した側から書く
- 退職代行で有給を拒まれたら。最大40日を条文で押し返す
- 退職代行でも退職金は出る。請求から7日以内と決まっている
面接に行く前に、3つを紙に書いてください。いま、口に出して言えますか? ここが埋まるだけで通過率は変わります!
採用側は、その3つが言える人に何十万円も払っていました。
※ 広告を含みます。この記事の採用側の話は、僕が在籍していた会社での経験です。すべての会社に当てはまるものではありません。
