執筆・監修:ちゃんみ(元・採用責任者。新卒・中途あわせて約500人を書類から最終面接まで担当/法人代表7年/確定申告8年)。この記事の数字と制度は、公式資料を原文で確認した日付つきで書いています。
このサイトでは、確定申告のやり方を6本書いてきました。20万円の数え方、経費の按分、開業届、インボイス、住民税、事業所得と雑所得の分かれ目。どれも自分でできる内容です。
僕自身、確定申告は8年やっています。法人の登記も自分でやりました。
そのうえで書きますが、全員が自分でやるべきだとは思っていません。やらないほうが安く済む人がいます。どこが分かれ目なのかを、条文と自分の経験から整理しました。
先に知っておくこと。税理士しかできない仕事がある
「分からないところだけ聞けばいい」と考えがちですが、聞ける相手が法律で限られています。
税理士の業務は税理士法2条に3つ挙げられています。
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税務署に対する申告・申請・請求・不服申立てを代わりに行う
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申告書などを作成して税務署に提出する
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課税標準等の計算に関する事項について相談に応じる
そして52条が短く効きます。
税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行つてはならない。
税理士法 第52条(e-Gov法令検索 2026年8月27日確認)
つまり「この経費は落ちますか」「この売上はいつ計上しますか」といった質問に答えられるのは税理士だけです。会計ソフトのサポート窓口は、ソフトの操作は教えてくれますが、税務相談には踏み込めません。
3つの分かれ目を読む前に。「頼むかどうか」を決めるための相談は無料で、合わなければ断れる。まず候補を1人出してもらってから読むと、線引きが自分事になる。
分かれ目① 消費税の申告があるか
これが一番大きい分かれ目です。所得税だけの申告と、消費税も申告する状態は、難易度が違います。
インボイス登録をすると、売上が1,000万円以下でも消費税の申告義務が生まれます。詳しくはインボイスの記事に書きました。
| 状態 | 申告するもの | 自分でやれるか |
|---|---|---|
| インボイス登録なし・売上1,000万円以下 | 所得税のみ | 会計ソフトで足りる |
| インボイス登録あり | 所得税+消費税 | 税区分の判定が増える。迷いやすい |
| 売上1,000万円超 | 所得税+消費税 | 同上 |
消費税は、売上と経費のひとつずつに税率と課税区分を判定して割り当てる作業が要ります。8%か10%か、課税か非課税か不課税か。取引の数だけ判断が発生します。
2割特例や簡易課税を選べる場合もありますが、どれが有利かは自分の数字を入れて比べないと分かりません。ここは相談したほうが早い領域です。
分かれ目② 65万円の控除を取りにいくか
青色申告特別控除は、要件で額が変わります。国税庁の案内はこうです。
青色申告者に対しては種々の特典がありますが、その1つに所得金額から55万円(一定の要件を満たす場合は65万円)または10万円を控除するという青色申告特別控除があります。
国税庁 タックスアンサー No.2072 青色申告特別控除(令和7年4月1日現在法令等。2026年8月27日確認)
55万円・65万円を取るには複式簿記での記帳と、貸借対照表・損益計算書の添付が必要です。10万円の控除なら簡易な記帳で済みます。
| 控除額 | 必要な記帳 | 現実的な手段 |
|---|---|---|
| 10万円 | 簡易簿記 | 手書きでも可能 |
| 55万円 | 複式簿記+決算書の添付 | 会計ソフトが実質必須 |
| 65万円 | 55万円の要件+追加要件 | 会計ソフト。要件は国税庁で確認する |
差は最大55万円です。所得税と住民税を合わせた税率が仮に20%なら、控除の差だけで11万円くらい変わります。ここを取りにいくかどうかで、必要な手間が決まります。
会計ソフトを使えば複式簿記の形は作れます。ただし入力した内容が正しいかどうかは、ソフトは判定しません。勘定科目の選び方や資産の計上を間違えたまま決算書ができあがります。
分かれ目③ 自分の時間をいくらで売っているか
ここが一番身も蓋もない基準です。
確定申告を自分でやると、初年度は数十時間かかります。制度を調べる時間、ソフトの使い方を覚える時間、迷って手が止まる時間を全部含めてです。2年目以降は減りますが、ゼロにはなりません。
副業の月収 ÷ 副業に使っている時間。本業の時給は使わない。副業の時給で考えます
初年度なら30時間、慣れて10時間くらいが目安です
時給3,000円 × 30時間 = 9万円。これが自分でやるときの実質コストです
税理士の費用は事務所と業務範囲で変わります。複数から取って比べます
時給が上がるほど、自分でやる理由は減ります。副業で月10万円を20時間で稼いでいる人なら、時給5,000円です。申告に30時間使うと、15万円の時間を使ったことになります。
頼んだ費用は経費になります
見落とされがちですが、税理士に払った報酬は必要経費に入ります。根拠は所得税法37条です。
その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額(中略)の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(中略)の額とする。
所得税法 第37条第1項(e-Gov法令検索 2026年8月27日確認)
つまり実質的な負担は、払った額から税率のぶんを引いた金額になります。税率20%なら、10万円払っても実質8万円です。
ここを計算に入れないまま「高い」と判断している人が多いと思います。
副業が伸びて法人化まで考えているなら、1人会社向けの定額顧問という選択肢もある。設立から決算まで最安帯でまとめたパッケージがあるので、個人の税理士と並べて見積を取る。
自分でやると決めた場合
3つの分かれ目のどれにも当たらないなら、自分でやって問題ありません。会計ソフトを1つ入れて、毎月まとめて入力するだけです。
このサイトに書いてある内容で、必要な判断はひととおり揃うようにしています。
- 副業の確定申告、20万円を売上で数えていませんか?
- 副業の経費、家賃は何割まで入れていいのか
- 「開業届は1か月以内」より、青色申告承認申請書の締切
- 副業のインボイス登録は義務ではありません
- 副業が会社にバレる原因は住民税です
- 副業の所得は事業所得か雑所得か。分かれ目は帳簿でした
ただし繰り返しますが、「この経費は落ちますか」に答えられるのは税理士だけです(税理士法52条)。ソフトのサポートに聞いても、そこは返ってきません。
頼むと決めた場合、何を基準に選ぶか
税理士は全員が同じことをしてくれるわけではありません。得意分野が分かれています。
- 副業・個人事業主の申告を扱っているか(法人専門の事務所もあります)
- 業務範囲がどこまでか。記帳代行まで含むのか、申告書の作成だけか
- 消費税の申告が含まれるか。所得税だけの見積もりのことがあります
- 連絡手段。チャットやオンライン面談に対応しているか
- 料金の内訳。顧問料と決算料が別建てのことがあります
1つの事務所だけ見て決めないほうがいいです。同じ内容でも見積もりに差が出ます。複数から取って、業務範囲を揃えて比べるのが確実です。
自分で1件ずつ探すと時間がかかるので、条件を伝えて紹介してもらう形のサービスもあります。無料で相談だけして、合わなければ断れる仕組みのものが多いです。
- 会計ソフトのサポートに税金のことを聞けますか
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ソフトの操作方法は教えてもらえますが、税務相談は税理士法52条により税理士以外はできません。経費になるかどうかの判断は、ソフトのサポート範囲外です。
- 副業の規模が小さくても税理士に頼めますか
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扱っている事務所はあります。ただし法人専門のところもあるので、個人事業主・副業の対応可否を最初に確認してください。
- 税務署に相談すれば無料ですか
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無料です。ただし申告期の窓口は混みます。相談できる範囲や時期も限られるので、早めに動くのが前提になります。
- 途中から税理士に頼むこともできますか
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できます。ただし年の途中からだと、それまでの記帳を整理する作業が発生します。早いほど費用は下がりやすいです。
- 税理士に頼むと税務調査に入られにくいですか
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そういう効果を示す公表資料は確認できていません。この記事では書きません。
- 費用は本当に経費になりますか
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業務のために支出したものは必要経費に算入されます(所得税法37条)。プライベートな相続の相談などは対象外です。
ここまで読んで頼む側に寄ったなら、まず何人か話を聞いてみるのが早いです。相性と料金は事務所ごとに違います。
紹介サービスを使うと、条件を伝えて候補を出してもらえます。相談の段階で費用はかかりません。
※ 広告リンクです。無料で相談でき、合わなければ断れます。金額と対応範囲は必ず契約前にご確認ください。
この記事で確認した条文と資料
- 税理士法(e-Gov法令検索)
- 所得税法(e-Gov法令検索)
- No.2072 青色申告特別控除(国税庁)
条文は2026年8月27日にe-Gov法令検索で原文を確認しました。税理士報酬の相場は、公表されている統計を確認できなかったため記載していません。
8年自分でやってきて思うのは、覚える価値があるのは最初の2年だけということです。仕組みが分かったあとは、同じ作業を毎年くり返しているだけでした。
